アドラー心理学でも有名な心理学者アルフレッド・アドラーは人の悩みの9割は人間関係であると断言しました。人が生命活動をするには、人との関わりは避けて通ることはできません。人は、それぞれ生きてきた環境も違えば、考え方も違い、その結果、物事の捉え方も人それぞれ変わってきます。その為意見が合わなかったりする場合も生まれ、それが問題となり悩みに発展してしまいます。そこで、精神科医エリック・バーンは、人と人が関わる時の自我状態に注目し、人と人との関わり方が上手くいけば、悩みの大半は解決できると考えました。そうして生まれた心理療法が、交流分析になります。
交流分析の特徴は、「今ここ、あなたも私もOK」の考え方をベースにして、他者と関わるときの自分の中の傾向を分析してきます。今回は、この交流分析について解説していきます。
交流分析の構成
交流分析は、対人関係に問題を抱える人に対して、自分自身の性質と他者との関わり方を分析し、個人の考え方に変化を促していく心理療法です。この交流分析は、自分自身の性質を客観的に把握し、実際に他者とどのように関わるべきかを見出していくために7つの視点からアプローチしていきます。まずは、その7つの構成要素について知りましょう。
- 自我状態
P(Parent)…親の影響を強く受け継いだ思考・感情・行動
A(Adult)…今ここで起こっている状態に直接反応している成人の思考・感情・行動
C(Child)…子どもの頃と同じような思考・感情・行動 - 対話分析
相手にもP/A/Cがある。そのことを理解し、適切なやりとりを考える - ストローク
相手の存在を認める全ての言動 - 人生態度
どのような態度で人生を歩んでいくべきか相互理解を示す - 時間の構造化
生きがいのある自分の時間の使い方を探究する - ゲーム分析
気付かぬうちにやってしまう人間関係のトラブル - 人生脚本
自分の人生のシナリオを遡り、本来あるべき自分の姿を取り戻す
この7要素を使って、クライアントのパーソナリティを客観的に把握していきどのようにして他者と関わるべきか検討していく。
私たちの中にある5つの自我について
私たちは、同じことが起きたとしても人それぞれ感じ方や考え方が違うので、当然どう行動するのかも変わってきます。また、たとえ同じ出来事が起きたとしても相手が違えば、違う反応にもなっていきます。これは、私たちに存在する自我は、人や出来事によって使い分けられているということになります。先程、自我状態には、親の影響を強く受け継いだ思考・感情・行動のP(Parent)、今ここで起こっている状態に直接反応している成人の思考・感情・行動のA(Adult)、子どもの頃と同じような思考・感情・行動のC(Child)があると書きましたが、さらに交流分析では、P(Parent)とC(Child)を細分化し5つに分類していきます。

この5つの自我状態が自分たちの中に存在する。出来事や相手によって無意識に使い分けられています。交流分析では、この5つを通して相手に対して自分がどんな自我状態で関わりを持っているのかを分析していきます。
人生態度について
人生態度とは、「自分」および「他人」に対しての基本的な立場のことを言います。人生態度は、3才から7才くらいで出来上がると言われており、その時期のこどもへの関わり方が、子供が大人になった時の対人関係形成力に大きな影響を与えると言われています。人生態度には、4種類あります。
- 自己肯定・他者肯定「私もあなたもOK」
- 自己肯定・他者否定「私はOK、あなたはNOT OK」
- 自己否定・他者肯定「私はNOT OK、あなたはOK」
- 自己否定・他者否定「私もあなたもNOT OK」
自己肯定・他者肯定だと豊かな人間関係を築くことができます。それ以外は、自分か相手が負担を感じるため豊かな人間関係を築くのは、難しくなります。特に自己否定・他者否定は、対人関係に強い苦痛を生じさせます。まずは、自分がどのスタンスを取ってしまうのかを自分自身が理解することで解決策が見えてきます。
ストロークについて
ストロークとは、他人の存在を認め、認めたことを表す「言動」のことです。ストロークには、プラスのストロークとマイナスのストロークが存在します。プラスのストロークとは、微笑み、挨拶、褒められるなど相手からもらうと気持ちが良くなるストロークです。マイナスのストロークは、睨まれる、殴られる、悪口を言われるなど相手からもらうと痛みを感じるストロークです。
私たち人間は、プラスのストロークを欲しいと感じ、マイナスのストロークは欲しくないと感じます。しかし、ストロ-クは、人が生きていく上で必要不可欠なものなので、何もストロークを感じれない状態になるとマイナスのストロークでも欲しくなり悪循環に陥ってしまうこともあります。これをストロークの法則と言います。
対話分析について
対話分析とは、クライアントの問題を引き起こしている交流様式を見つけ出し改善をしていくことです。分析は、自分そして相手の自我状態に着目し、次にストロークの交換に着目していきます。
ストロークの交換は、大きく3つに分けることができます。
- 相補的交換(スムーズな交流)
- 交叉的交流(行き違い・ちぐはぐな交流)
- 裏面的交流(裏に本心が隠れている交流)
相補的交流であれば、スムーズな会話を楽しめますが、それ以外の交流では、ギクシャクしたストローク交換になります。
時間の構造化について
時間の構造化は、自分の時間の使い方を考えて、日々の生活行動を立てることです。その際に時間を6つの項目で分けていきます。
- 引きこもり
物理的・身体的にそこにはいても他者と関わりを持たない→自分を守る - 儀式
自己紹介や挨拶など社交的なやりとり→人と深く関わらなくてもストロークが得られる - 暇つぶし
軽い表面的な会話。料理や洋服、車などの会話→円滑な人間関係を長続きさせる - 活動
目標達成に向けてどう動くかを話し合う。成果のためにエネルギーを向ける→社会適応性が高い - ゲーム
相手を思い通りに操作しようとする不快感を生じさせる「対話」→利己的に相手を利用ぢ用とした結果、自分も悪い気分になる - 親密さ
お互いの存在や価値観を承認し合うコミニケーション→関係を維持、強化できる
時間の構造化の手順
①6つの時間の構造化の形式で一日どのくらい過ごしているかを知るためん円を書いてその中で現状の時間を振り分けて現実を見る。
②現実を見て変えたいかどうかを自分自身に尋ねる
③変えたい場合は、自分の理想の時間構造のパーセンテージを書いていく
④具体的に増やしたい時間を増やすためにやることを3個ほど書いてみる
⑤来週1週間、意識して行動してみる。
まとめ
交流分析を使うことで、人間関係の問題を客観的に整理して解決策を見出していくことができます。人間関係の問題解決のアプローチ法を知っておくことで、いざ、自分が人間関係で悩んだ際に冷静に問題事項に対して対処することができます。私は、こうだから、あなたもこうと自分の意見を押し付けるのでなく、人それぞれ生きてきた環境が違うからこそ考え方や価値観も違うことも意識して、物事に対して対処していくことが重要です。人間の悩みの9割は、人間関係。つまり人間関係の悩みの問題解決策を知っておくことは、自分を護ことにも繋がります。ぜひ悩んだ際には、利用してみてください。1人で悩んで苦しい場合は、カウンセリングもご利用ください。
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